1)トリプトファン代謝変容と疾患

   

必須アミノ酸の一つであるトリプトファンからはキヌレニンをはじめとする代謝産物が合成されます(キヌレニン経路)。キヌレニン経路中の物質は免疫寛容を引き起こしたり、各種受容体のアゴニストあるいはアンタゴニストとして働くなど、免疫疾患や精神疾患の病態に関連しています。


・トリプトファン代謝の変容と精神疾患に関する研究

我々は、インターフェロン治療に伴い、抑うつを発症した群ではトリプトファン代謝が活性化していることを明らかにしています。(協力:岐阜市民病院) また、動物モデルを用いて、インターフェロンによる抑うつモデルの作成に成功し、さらにはトリプトファン酵素を阻害することにより、抑うつの発症が抑えられることを明らかにしました。

・Indoleamine 2,3-dioxygenase1の生理的役割に関する研究

Indoleamine 2,3-dioxygenase1(IDO1)は、必須アミノ酸であるトリプトファン(Trp) 分解代謝系の律速酵素で、IDO1の過剰発現による免疫寛容(Muller AJ et al. Nat Med. 2005 11:312-319.)と腫瘍の増殖、さらに最近ではIDO1によるT細胞やNK細胞の機能制御が報告され、IDO1が新規免疫制御因子として注目されています。また、IDO1阻害剤はがんに対する新規治療薬として期待されています。 われわれは、IDO1の酵素活性を阻害する物質がないかを各種植物抽出液やフィトケミカルを用いて評価したところ、ミョウガに含まれるガラナールという物質がIDO1の酵素活性を阻害することを明らかにしました。